心臓と血管、そしてその先の
“健康寿命”を支える診療科

循環器内科イメージ

循環器内科は、心臓と血管の病気を専門に診る診療科です。
「心臓」は全身に血液を送り出すポンプのような役割を担い、「血管」はその血液を運ぶ通り道です。
どちらかに不調が起こると、体全体に影響が及びます。
また、心臓は「脳・腎臓・肝臓・肺」など全身の臓器と血管を通じて繋がっており、病気も密接に関わっております。
循環器内科では単に心臓や血管だけを見るのではなく、全身の状態を総合的に診ることを大切にしています。

心臓の病気

心臓の病気には多くの種類があります。
代表的なものには次のような疾患があります。

  • 狭心症・心筋梗塞
    心臓を栄養する血管(冠動脈)に異常が起こる(狭くなったり詰まったりする)病気
  • 不整脈
    心臓の電気の流れに異常が起こることで、脈が速くなったり遅くなったり乱れたりする状態
  • 心筋症・心筋炎
    心臓の筋肉自体に障害が起こる病気(肥大型心筋症・拡張型心筋症・アミロイドーシス・サルコイドーシス、高血圧性心疾患など)
  • 弁膜症
    心臓の中で血液の流れを調整している「弁」に異常が起こる病気(例:大動脈弁狭窄症/逆流症、僧帽弁狭窄症/逆流症など)
  • 先天性心疾患
    生まれつき心臓の構造に異常が起こる病気

これらの病気は、初期には症状が乏しいことも多いです。

心臓の病気は最終的に、心不全を発症します。
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、体に血液を十分に送れなくなる状態で、一旦発症すると、再発を繰り返しながら徐々に命を縮めてしまい、社会的には大きな問題となっております。

息切れやむくみ、動悸、疲れやすさなどのサインを見逃さないことが大切です。

血管の病気

血管の病気も多岐にわたります。
動脈硬化をはじめとした血管のトラブルは、全身のさまざまな臓器に影響を与えます。

  • 脳梗塞や頸動脈狭窄症(の血管の病気)
  • 腎動脈狭窄症(腎臓の血管の病気)
  • 閉塞性動脈硬化症(の血管が詰まる病気)
  • 大動脈瘤・大動脈解離(体の中心を走る太い血管の病気)
  • 肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症など)・肺塞栓症(心臓からへ向かう血管の病気)

生活習慣と循環器病の関係

生活習慣が原因ではない循環器病もありますが、
多くの循環器病は生活習慣と関係しています。
どんな循環器病でも「生活の見直し」が治療の一部です。

たとえ生活習慣が直接の原因でない病気であっても、
発症後の生活習慣の見直しは再発や悪化の予防につながります。
心臓や血管に負担をかけない生活を続けることが、薬だけでは得られない治療効果を生みます。

薬を適切に使い分けることは医師の大切な責務ですが、
「薬を減らせる状態をつくる」こともまた、専門家の役割だと考えています。
食事や運動を少し見直すことで、血圧や血糖のお薬を1剤でも減らせるかもしれません。

心臓リハビリテーションとの連携

循環器病の治療では、「動かない」ことがかえって体力や心臓の働きを弱めてしまうこともあります。
心臓リハビリテーションでは、医師・理学療法士・看護師・栄養士など多職種が連携し、
安全に体を動かしながら、再発を防ぎ、元気を取り戻すお手伝いをします。

生活習慣の見直しも循環器治療の一部です

心臓や血管の病気を診るだけでなく、
「病気にならない体」「再発しにくい体」を一緒に作っていくことが循環器内科の大切な役割です。

狭心症・
心筋梗塞(虚血性心疾患)

狭心症や心筋梗塞は、心臓を動かす冠動脈が動脈硬化で狭くなり、血流が途絶えることで起こります。
カテーテルという細い管を血管に通し、狭くなった部分を風船で広げて金属の筒(ステント)を入れることで血流を回復させるのが「カテーテル治療(PCI)」です。
ステントは「詰まった部分の血流を回復させる治療」であり、血管全体の動脈硬化を治すものではありません。
そのため、ステントを入れても他の場所で再び動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞を起こすことがあります。
現在の薬剤溶出性ステント(DES)の普及により、ステントを入れた部位の再狭窄は5〜10%程度にまで減少しました。
一方で、「別の部位」で新たに動脈硬化が起こる再発は、年間2〜3%前後に見られます。
つまり、再発の確率自体は決して高くはありませんが、一度再発して心筋梗塞になると、約30〜40%の方が命を落とすか、重い心不全を残すと報告されています。

ステント治療は “血管の一部分を治す治療”

病気の根本である“血管の老化”を防ぐことが本当の再発予防です。

再発を防ぐために大切なこと

心筋梗塞や狭心症を防ぐには、血管全体を守る治療が必要です。
再発予防の柱は以下の3つです。

薬物治療

血液をさらさらにする薬、コレステロールや血圧を下げる薬を継続することで、再発リスクを大幅に減らすことができます。
適切な薬物治療を続けることで、再発や死亡のリスクを40〜50%低下させることが知られています。

運動療法(心臓リハビリ)

医療管理下で行う運動は、安全に心臓を鍛えるだけでなく、再発や死亡を防ぐ効果が科学的に証明されています。

生活習慣の改善

病院の監視下で行う運動は、心臓に負担をかけないように安全面に配慮しながら運動を行い、体力をもどすだけでなく、動脈硬化の予防により、再発や死亡を防ぐ効果が科学的に証明されています。
心肺運動負荷検査で精密検査を行うことで、患者さんの心臓や全身の状態にあった運動処方を行うことが可能です。

このような方は受診ください

  • 胸の痛み・圧迫感・締めつけ感がある(特に階段や坂道を上るとき、または安静時にも起こる場合)
  • 肩・あご・背中・左腕などに痛みが広がることがある
  • 動悸や息切れが強くなってきた
  • 胸の違和感があるが、検査を受けたことがない
  • 健診で「心電図異常」「心肥大」「冠動脈硬化」などを指摘された
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙など、動脈硬化の危険因子がある
  • 家族に心筋梗塞や突然死の既往がある
  • 以前ステント治療を受けたが、定期的なフォローをしていない
  • 心筋梗塞を発症後、再発予防の運動や生活習慣を指導してもらっていない
  • カテーテル治療後の薬の調整や副作用が心配

メッセージ

ステントで「今の詰まり」を治すことができても、「これから先の詰まり」を防ぐのは、毎日の生活と治療の積み重ねです。
さかねクリニックでは、薬・運動・食事の3つを軸に、一人ひとりに合わせた“再発しない心臓づくり”をサポートします。

肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy)

肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が部分的に厚くなる病気です。
多くの場合、遺伝的な要因が関係しており、心臓の構造や働きに影響を与えます。
頻度はおよそ200人~500人に1人程度といわれ、比較的頻度の高い遺伝性疾患です。
心筋が厚くなることで、心臓の中の血流が通りにくくなったり、
不整脈が起こりやすくなったりすることがあります。
一方で、多くの方は無症状で日常生活を問題なく送ることができます。

症状について

症状は人によってさまざまですが、以下のような症状がみられることがあります。

  • 動いたときの息切れ、動悸
  • 胸の痛み(特に運動時)
  • 立ちくらみ、失神
  • 脈が飛ぶ、脈が乱れる
  • むくみや倦怠感

無症状の方も多く、健康診断や心電図検査、心エコー検査で偶然見つかるケースもあります。

診断について

肥大型心筋症は「除外診断」です。
肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が部分的に厚くなる病気ですが、
“心筋が厚い=肥大型心筋症”とは限りません。
実際には、心臓が厚くなる原因にはさまざまなものがあり、
それらを丁寧に除外していくことが診断の第一歩となります。
そのため、肥大型心筋症は「除外診断」と呼ばれます。
つまり、ほかの病気によって心筋が厚くなっていないことを確認して初めて、肥大型心筋症と診断します。

除外すべき主な疾患

心肥大をきたす原因は多岐にわたります。
問診や診察・血液検査・画像検査などを組み合わせて、以下のような病気を慎重に除外していきます。

比較的よくある原因

  • 長年の高血圧による心肥大
  • 大動脈弁狭窄症などの弁膜症
  • 運動選手にみられる「アスリートハート」(生理的な肥大)

より専門的な精査が必要な原因

  • 心アミロイドーシス(心筋への異常タンパク沈着)
  • ファブリー病などの代謝性疾患
  • ミトコンドリア病などの遺伝性代謝異常
  • 遺伝性筋疾患やストレージ病(蓄積症)

専門的な検査が必要なケース

問診や基本的な検査で除外できるものもありますが、
より専門的な病気が疑われる場合には、追加の検査が必要になります。

  • ピロリン酸シンチグラフィ
    心アミロイドーシスを見分ける検査
  • 心臓MRI検査
    心筋の線維化やパターンを詳細に評価

これらの検査を組み合わせることで、真の原因を正確に診断していきます。
精密検査が必要な場合は、専門医療機関と連携して検査を行います。

予後とリスク

肥大型心筋症の多くは予後良好であり、長期にわたり安定して経過します。
しかし、一部の方では不整脈(心房細動・心室性不整脈)、心不全、脳梗塞など重篤な合併症を起こすことがあります。

特に注意が必要な患者さんを判断する上で、古くから知られている「危険因子」として、以下が知られています。

  • 突然死の家族歴
  • 過去の失神歴(原因不明の失神)
  • 著明な左室肥大(心筋の厚さが30mm以上)
  • 運動中の血圧低下
  • 心室頻拍(持続性または非持続性)の出現
  • 心臓のエコー検査で左室流出路という部分が狭くなる
  • MRIでの線維化の存在(遅延造影)

こうした危険因子を複合的に評価し、リスクに応じて治療やフォローアップを行います。

突然死のリスクについて

肥大型心筋症における突然死の頻度は年間0.5〜1%未満と報告されています。
つまり、ほとんどの方は大きな問題なく過ごせますが、
まれに重い不整脈や心不全、脳梗塞をきっかけに重篤な経過をたどることがあります。
頻度は決して高くありませんが、万が一を防ぐために、
定期的な心電図・心エコー・ホルター検査などで経過を見守ることが大切です。
突然死予防のためには、ICD(植込み型除細動器)による治療が検討される場合があります。

このような方は受診ください

  • 健診や人間ドックで「心肥大」「心電図異常」を指摘された
  • 運動中に胸の痛み、動悸、息切れを感じる
  • 立ちくらみや失神を起こしたことがある
  • 胸の違和感があるが、検査を受けたことがない
  • 家族に突然死や心臓の病気がある
  • ICD(植込み型除細動器)の適応を説明されたが、判断に迷っている
  • 既に診断を受けており、定期的な経過観察を希望している

まとめ

肥大型心筋症は、ほとんどの方が安定した経過をたどる一方で、一部の方では不整脈や心不全を起こすことがあります。
医師が丁寧にリスクを評価し、「必要な方に必要な治療を」行うことが大切です。
当院では、患者さんの不安に寄り添いながら、検査・評価・フォローアップを通して、安心して過ごせる医療を目指しています。

心房細動(しんぼうさいどう)

心房細動は、心臓の上の部屋(心房)が不規則に震えることで、脈がバラバラに乱れる不整脈です。
動悸や息切れ、胸の違和感、倦怠感などを感じる方もいれば、まったく症状がない方も少なくありません。

心房細動のこわさ

心房細動になると、心房の中で血液がよどみ、血の塊(血栓)ができやすくなります。
この血栓が脳の血管に飛ぶと、脳梗塞を起こすことがあります。
また、脈が速く乱れた状態が続くと、心臓が疲弊して心不全を引き起こすこともあります。
脳梗塞を発症してから初めて「心房細動」と診断される方は、研究によって約16〜22%と報告されています。
つまり、症状がなくても心房細動が進行しているケースが少なくないということです。

心房細動の治療

治療の目的は、「脳梗塞や心不全を予防し、生活の質と寿命を守ること」です。
治療には大きく2つの方向があります。

①リズムコントロール(正常な脈に戻す治療)
薬(抗不整脈薬)やカテーテルアブレーションで脈を整える治療です。
カテーテルアブレーションは心房内の異常な電気回路を焼灼し、再発を防ぐ方法で、発作型では特に効果が期待できます。
ただし、長期間放置して慢性化すると、心房のリモデリングが進行し、正常リズムに戻すことが難しくなります。
→早期発見・早期治療が重要です。
②レートコントロール(脈を整える治療)
心房細動のままでも、脈拍を一定の範囲に保つようにコントロールする方法です。
脈が落ち着けば息切れや動悸の改善が期待できます。
③抗凝固療法(血をサラサラに保つ治療)
脳梗塞を防ぐために非常に重要です。
リスクに応じて、抗凝固薬(ワルファリンやDOACなど)を使用します。

心房細動のリスクと予防

心房細動を発症するリスクは、年齢・高血圧・糖尿病・肥満・心臓病などにより上昇します。
リスクスコアによる研究では、
低リスク群では年間0.2%程度
高リスク群では年間3〜5%にまで発症率が上がると報告されています。
こうしたリスクのある方は、定期的な心電図検査やホルター心電図(24時間心電図)で早期発見を目指すことが大切です。

このような方は受診をご検討ください

  • 動悸や脈の乱れ、胸の違和感、息切れがある方
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病がある方
  • 脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)を起こしたことがある方
  • 脈がバラバラだと指摘された方
  • 家族に心房細動や脳梗塞の既往がある方
  • 定期健診で「不整脈」と言われた方
  • 利尿薬や降圧薬などを内服している方
  • 利尿薬や降圧薬などを内服している方
  • 健診異常や、血圧・脈の不安を感じる方

院長より

心房細動は、症状がなくても進行し、気づかぬうちに脳梗塞を引き起こす可能性がある病気です。
しかし、早期に見つけて適切に治療すれば、再発や重症化を大きく減らすことができます。
当院では、生活習慣病の管理や運動療法を通じて、再発予防と生活の質の向上をサポートします。

心房期外収縮(しんぼうきがいしゅうしゅく)

心房期外収縮とは、心臓の上の部屋(心房)から通常より早く電気信号が出て、
脈が一瞬「ドキン」と飛んだり、不規則に感じる不整脈のことをいいます。
健康な方でも日常的に起こることがあり、多くは良性の不整脈です。
しかし、頻度が多い場合や、心房細動の前ぶれとして出現している場合もあります。

心房期外収縮の症状

  • 胸がドキッとする、抜ける感じがする
  • 脈が不規則に感じる
  • 動悸、息切れ、胸の違和感
  • 無症状で健診や心電図で偶然見つかることも多い

心房期外収縮の原因

心房期外収縮は、心臓の興奮が早く出ることで生じます。
次のような要因で誘発されやすくなります。

  • 睡眠不足・ストレス・カフェイン・アルコール
  • 自律神経の乱れ
  • 高血圧、心不全、弁膜症、心房拡大などの心疾患
  • 甲状腺機能異常
  • 薬剤(気管支拡張薬、利尿薬など)
  • 加齢や肥満

放置してよい場合と注意が必要な場合

多くの方では一時的なもので、治療を必要としません。
しかし、以下のような場合は心房細動のリスクが高いため、経過観察が大切です。

  • 頻繁に起こる、または症状が強い
  • 長時間続く動悸や脈の乱れがある
  • 心疾患(高血圧、弁膜症、心不全など)がある
  • 甲状腺疾患がある
  • 以前に脳梗塞やTIA(軽い脳梗塞)を起こした

診断と検査

  • 心電図:一過性の場合、タイミングよく波形を捉えることが難しいため、Holter心電図が有用です。
  • Holter心電図(24時間記録):出現頻度やリズムの傾向を確認します。
  • 心エコー検査:心房の拡大や弁膜症、心機能の状態を評価します。
  • 血液検査:甲状腺機能や電解質異常などをチェックします。

治療について

①生活習慣の改善
ストレス・睡眠・飲酒・カフェイン・脱水などが影響するため、生活習慣の見直しが第一歩です。
②薬物療法
動悸が強い場合や、頻発して心機能に影響する場合にはβ遮断薬などを使用します。
背景に高血圧や心不全がある場合は、その基礎疾患の治療が優先されます。
③心房細動への移行予防
頻発する心房期外収縮は、心房細動の発症リスクと関連します。
必要に応じて、定期的な心電図やHolter検査で経過をみていきます。

長期的な影響と予防

心房期外収縮そのものは良性ですが、心房細動の前兆となることがあります。
心房細動になると、脳梗塞や心不全のリスクが高まるため、早期発見・早期介入が重要です。
定期的な検査により、心房細動への移行サインを見逃さないことが大切です。

このような方は受診をご検討ください

  • 胸のドキドキや脈の乱れを感じる方
  • 健診で「期外収縮」や「不整脈」と指摘された方
  • 動悸が長く続く、息苦しさを感じる方
  • 心臓病、高血圧、甲状腺疾患などをお持ちの方
  • 心房細動や脳梗塞の家族歴がある方
  • カフェイン、飲酒、ストレスで症状が悪化する方

院長より

心房期外収縮は多くの場合、治療を必要としない軽度の不整脈ですが、
「心房細動の入口」であることもございます。
当院では、心電図・ホルター・心エコーによる丁寧な評価と、
生活習慣・基礎疾患を含めた総合的な心臓ケアを行っています。
気になる脈の乱れや動悸がある場合は、早めにご相談ください。

心室期外収縮(しんしつきがいしゅうしゅく)

心室期外収縮とは、心臓の下の部屋(心室)から通常より早く電気信号が出て、
「ドキッ」と脈が飛んだり、「胸が一瞬止まったような感じ」がする不整脈です。
健康な方でもよく見られるもので、多くは良性です。
しかし、頻度が多い場合や、他の心疾患を合併している場合には注意が必要です。

心室期外収縮の症状

  • 胸がドキンとする・一拍抜ける感じ
  • 動悸・息苦しさ・胸の圧迫感
  • めまい・ふらつき・不安感
  • 無症状のことも多く、健診や心電図で偶然見つかることもあります

心室期外収縮の原因

心室期外収縮は、以下のようなさまざまな原因で起こります。

  • ストレス・睡眠不足・カフェイン・アルコール
  • 自律神経の乱れ
  • 高血圧・心不全・心筋症・心筋梗塞後などの心臓病
  • 電解質異常(カリウム・マグネシウムなど)
  • 薬剤性(気管支拡張薬、利尿薬など)

放置してよい場合と注意が必要な場合

多くの心室期外収縮は一過性で、特別な治療を要しません。
しかし、次のような場合は心臓病のサインであることがあり、精密検査が必要です。

  • 1日1万回以上の期外収縮がみられる
  • 連発している
  • 心不全や心筋梗塞など心筋の病気が原因となっている
  • 心臓超音波で心機能低下がある
  • めまいや失神などの症状を伴う
  • 運動時にも頻発する

診断と検査

  • 心電図検査:不整脈の種類や形を確認
  • ホルター心電図(24時間心電図):日常生活中の不整脈の頻度を評価
  • 心エコー検査:心臓のポンプ機能・構造の異常を確認
  • 採血(電解質・甲状腺・貧血など):背景因子をチェック
  • 運動負荷心電図:運動による不整脈が誘発されるかチェック

治療について

①原因の改善
睡眠・ストレス・飲酒・カフェインなどの生活習慣を見直すことで改善する場合が多くあります。
②薬物療法
症状が強い場合には、β遮断薬などの不整脈抑制薬を使用します。
背景に心臓疾患がある場合には、その治療を優先します。
③カテーテルアブレーション
薬で十分に抑えられず、頻度が多く心機能に悪影響を与えている場合には、
原因部位を焼灼して根治を目指す「カテーテルアブレーション」も選択肢となります。

長期的な影響と予防

頻発する心室期外収縮が続くと、「期外収縮誘発性心筋症」と呼ばれる心機能低下を起こすことがあります。
一方で、基礎心疾患がなく、軽度の場合は予後は良好です。
定期的な心電図・心エコー・Holter検査で経過をみることが大切です。

このような方は受診をご検討ください

  • 動悸や胸の違和感、脈の乱れを感じる方
  • 健診で「期外収縮」や「不整脈」を指摘された方
  • めまいや息切れ、疲れやすさを感じる方
  • 心筋梗塞や心不全などの心臓病をお持ちの方
  • カフェインやストレスで症状が悪化する方
  • 利尿薬・降圧薬などを内服中の方

院長より

心室期外収縮は、多くの場合は良性で経過しますが、時に注意を要することがあります。
経過をみて治療方針を判断することも多く、生活習慣の見直しや薬の調整を含め、患者さんの状態と相談しながら治療方針を決めていければと考えております。
気になる症状がある場合は、いつでも受診して相談してください。

QT延長症候群

QT延長症候群は、心電図で「QT間隔」という部分が通常より長くなる状態です。
QT間隔とは、心臓が電気刺激によって収縮した後、次の収縮に向けて回復(再分極)するまでの時間を示しています。
この時間が延びてしまうと、心臓のリズムが一時的に乱れ、「心室頻拍(トルサード・ド・ポアンツ)」という危険な不整脈を起こすことがあります。
重症の場合、失神や突然死の原因になることもあります。

原因

QT延長症候群には、次の2つのタイプがあります。

先天性QT延長症候群

遺伝子異常により、心筋細胞の電気的回復に関わるイオンチャネルが正常に働かないタイプです。
家族内で突然死や失神の既往がある場合には、このタイプの可能性があります。
後天性QT延長症候群
薬剤(抗不整脈薬、抗菌薬、抗うつ薬など)や電解質異常(低カリウム血症・低マグネシウム血症など)、心不全や徐脈などが原因となってQT時間が延長するタイプです。
特に複数の薬を内服している場合は注意が必要です。

症状

  • 動悸、めまい、ふらつき
  • 意識消失(失神)
  • けいれんを伴う発作

無症状のこともありますが、突然死で初めて見つかることもあります。

診断

12誘導心電図でQT間隔を計測し、補正式(QTc)を用いて判定します。
QTcが450ms以上(男性)・460ms以上(女性)の場合に延長とされます。
家族歴、服薬歴、電解質異常の有無を確認し、必要に応じて遺伝子検査を行います。
ホルター心電図や運動負荷心電図で、日常生活や運動時のQT変化を評価することもあります。

治療

QT延長症候群の治療は、原因と重症度に応じて行います。

  • 原因薬剤の中止・見直し
  • 電解質異常の補正
  • β遮断薬の内服(交感神経の過剰な刺激を抑える)
  • ICD(植込み型除細動器):致死的不整脈の既往がある方、家族歴が強い方に適応

遺伝性の場合は家族検査も重要です。

発症・再発予防のために

  • 処方薬・市販薬を服用する際は、必ず主治医にQT延長の既往を伝える
  • 電解質異常を起こさないよう、過度な下痢や嘔吐、脱水に注意
  • カフェインや過度のアルコール摂取を避け、睡眠不足やストレスを減らすことも有効です。

このような方は受診を

  • 動悸、めまい、失神などが繰り返す
  • 家族に突然死や失神の既往がある
  • 心電図で「QT延長」と言われた
  • QT延長を指摘されているのに、複数の薬を服用している

ブルガダ症候群(Brugada症候群)

ブルガダ症候群とは、心臓の電気の流れ(ナトリウムチャンネル)の異常によって、心室細動などの重篤な不整脈を引き起こすことがある病気です。
見た目には健康で、心臓の形や機能にも問題がない方が、突然死のリスクを持つ可能性があることから、重要な疾患として知られています。

受診のきっかけ

健康診断や他の目的で受けた心電図で、「ブルガダ型心電図」「右脚ブロック様の波形」などと指摘されて受診される方が多いです。
ブルガダ症候群と診断されるためには、特有の心電図パターンと臨床的背景の両方を満たす必要があります。
そのため、「ブルガダ型心電図がある=ブルガダ症候群」とは限りません。

ブルガダ型心電図とは?

心電図で、特にV1〜V3(胸の右側)の誘導に特徴的な波形が現れます。
代表的なものは以下の2つです。

  • Type1型(典型的ブルガダ型):
    STが鞍型ではなく「凸型」に上がり、その後下がる波形。診断に最も重要。
  • Type2・3型(非典型型):
    ST部分が鞍のようにへこんだ形。確定診断には至らないことが多く、経過観察が必要です。

この波形は、発熱・脱水・アルコール摂取・薬剤(抗うつ薬、解熱鎮痛薬など)で強く出ることもあり、
症状のない方でも一時的に現れることがあります。

不完全右脚ブロックとの違い

ブルガダ型心電図は、不完全右脚ブロックと似た波形を示すため、健診などで「右脚ブロックの疑い」と言われて心配される方も多いです。
しかし、不完全右脚ブロックは「伝導の遅れ」による生理的変化であり、ほとんどが良性です。
一方、ブルガダ症候群は「電気活動の異常」であり、重症不整脈の原因となる可能性があります。

症状とリスク

ブルガダ症候群は、夜間や安静時、睡眠中に突然失神や心停止を起こすことがあります。
これが「心室細動(致死性不整脈)」によるものです。
主な症状・エピソードは以下のとおりです。

  • 夜間の失神、けいれん様の意識消失発作
  • 睡眠中に突然の心停止(家族に目撃されることも)
  • 家族に若年突然死の方がいる

診断の流れ

心電図検査
まず、心電図を再検査し、典型的なType1型の波形があるかどうかを確認します。その際に右側胸部誘導を1肋間上げた場所で記録したものを施行します。
Type2型であれば経過観察可能ですが、Type1型のブルガダ波形を認める場合は危険度が高いため、心臓超音波検査、ホルター心電図、運動負荷検査などを施行しています。また失神や意識消失発作などを起こしたことがないか、家族に若くして亡くなった方がおられないか問診で確認いたします。
それらのいずも問題なければ経過観察となることが多いですが、異常所見を認める場合は、薬剤負荷試験や電気生理学的検査、遺伝子検査のため専門施設を紹介することになります。

治療について

①発作予防・生活管理
発熱や脱水時はリスクが上がるため、こまめな水分補給・早めの解熱が重要です。
一部の薬剤(抗うつ薬、解熱鎮痛薬、抗不整脈薬など)はブルガダ型を誘発することがあるため注意が必要です。
アルコールの摂取や過労も避けましょう。
②薬物療法
明確な予防薬はありませんが、心室細動再発抑制にイソプロテレノールやキニジンを使用する場合があります。
③植込み型除細動器(ICD)
意識消失や心停止の既往がある方、検査で重症不整脈が誘発される方は、
再発予防のためにICD(植込み型除細動器)を検討します。

経過観察とフォロー

ブルガダ症候群は、症状のない方でも波形が変動するため、定期的な心電図・ホルター心電図での経過観察が大切です。
特に発熱時や体調変化時は、波形が悪化することがあるため注意が必要です。

このような方は受診をご検討ください

  • 健診で「ブルガダ型心電図」または「右脚ブロック」と指摘された方
  • 夜間や安静時に失神・けいれんを起こしたことがある方
  • 家族に若年突然死・原因不明の失神歴がある方
  • 高熱時に心電図異常を指摘された方
  • 抗うつ薬・睡眠薬・抗不整脈薬など服薬中で、動悸や脈の乱れを感じる方

院長より

ブルガダ型心電図があっても、自覚症状がない場合の突然死リスクは、一般の方と大きく変わらないとされています。一方で、ブルガダ型心電図の中にリスクの高い方が含まれていることも事実であり、一度は適切な評価を受けることが重要です。
Type1型(Coved型)は致死性不整脈のリスク評価が必要となるため、不整脈専門の病院の受診をおすすめさせていただきます。Type2型(Saddle-back型)は、まずは循環器内科での評価が適切です。なお、Type2型(Saddle-back型)であっても、経過中にType1型(Coved型)へ変化することがあります。
波形によっては、定期的な心電図検査による経過観察が大切です。「ブルガダ型心電図」と言われた方も、過度に心配せず、一度専門的に評価を受けることをおすすめします。